ヴィジュアル系ってなんだ?

 性懲りもなくまたヴィジュアル系の話です。BGMはKlein Kaiserのfreezaです。なんですか?そうですよ。Davidノ使途:alも好きですよ。衣装及びセットに、自分達の表現したい世界観よりもバンドが先読みした受け手側の嗜好や期待を優先させる、ジャニーズ系ヴィジュアルバンドの始祖だと思います。ライブ中に頭振り過ぎてズラ吹っ飛ばしたミサ様が好きなんです。そこから開き直ってズラ廃止に及んだあたり神ですね。ぱっと見B-boy、でもヴィジュアル系。彼の声と楽曲はことごとく私のツボです。


 ところでヴィジュアル系ってどういう範囲のくくりなんでしょう。
 『ヴィジュアル系』という言葉はX JAPANのHIDEが自分達の形容詞として提唱したものです。そのあたりから1化粧 2凝った衣装 3バンド形式 4耽美・暗黒的な楽曲、これらの要素を持つアーティストが増え始め、ヴィジュアル系というジャンルが育っていきました。まぁこのさきのヴィジュアル系の歴史やバンドの勃興は省略するとして、ヴィジュアル系の定義って存在しないんですよね。
 アーティストも受け手もヴィジュアル系を自認している場合、アーティストは否定しているが受け手はヴィジュアル系だと思っている場合、アーティストの自認に対して受け手の間でも評価が割れる場合。私が一番ひでーなーと思ったのは、バラエティ番組に出てきたちょっと顔の良い民間人の若い男性のことを「アンタヴィジュアル系やな」と言っていたことです。
 ここで引っぱりだしたいのが、80年代のバンドブームとTV番組『イカス!バンド天国』(イカ天)です。この時期にバンドブームという潮流に乗ってブレイクしたのは、たま、X JAPANBLANKEY JET CITY筋肉少女帯等もうジャンルとしては何の統一感もありません。とはいえ、これらのバンドはなべて80年代バンドブームのバンドという括りを持っています。これは、各ジャンルの間にグラデーションのようにさまざまなポリシーやコンセプトを持つバンドが存在したうえで、この時代のバンド及びバンドマンの目標としてイカ天を始めとするバンドブームを生み出しているメディアに乗るという目的があったからです。つまり、あるバンドがバンドブームの時代のものであると認識されるのは、そのバンドがイカ天に出たから、あるいは出たかったからなのです。
 これをヴィジュアル系に適応させてみると、MALICE MIZERも Laユcryma Christiも FANATIC CRISISも SHAZNAも、一アーティストとしてそれぞれは絶対無二の存在ですが、この四つのバンドがヴィジュアル系とされるのはヴィジュアル系バンドを商品としていた産業にその商品(原料)を供給していたからです。具体的にはSHOXX、Vicious、M-gazetteなどの雑誌、Like an Edison、自主版倶楽部、Brand X、Third StageなどのCDショップなどがあげられます。(関東周辺情報ですが)
 つまりヴィジュアル系とは、音楽という芸術作品を経済的に流通させるために産業側から作られたある種のブランドです。ただ、物品に付与されたブランドとは違い芸術作品はそれ自体に解釈の幅があるので、ブランド自体の範囲も音楽を受け取って解釈する個人によってさまざまな形態を持ちます。これによって、ヴィジュアル系というブランドが漠然とした括りとなっています。
 ヴィジュアル系がファジーな括りである理由は、ヴィジュアル系が音楽であるから、芸術作品であるからです。ヴィジュアル系とは何かという議論は、芸術作品を享受する最小のユニットである個人で行い、個人で決定するものなのです。